22年秋は、『ガンダム水星の魔女』や『チェンソーマン』の大ネタだけでなく視聴。改めてアニメは面白いと、思ったシーズンでした。
どれも面白かったので、60本以上もあった秋アニメの内、本当に面白いけど気が付かなかったアニメもあるんではないか?大ネタの影で自分だけでなく皆の視聴リストから落とされた、ほんとうは評価されるべきアニメがあったのではないか?というのが気になりました。
そんな中、めちゃくちゃアニメを見る集団の噂を聞き、大ネタしかみない自分が見逃したであろう素敵アニメをおすすめしてもらうべく、取材させていただくことにしました。これは、めちゃくちゃアニメを見るDJ集団の皆さんのお話を起こした記事になります。
お話を聞いためちゃくちゃアニメを見るDJの方々
きもとさん/にしぞのさん/thzaqさん/たんくさん/はるのおとさん
文:木崎原康浩
―今期だったら70本は見てる―
まず最初に「今期なに見ました?」。と軽く聴きました。これはもう近年では、天気の話題くらいの会話の枕詞のような質問でした。実際ご挨拶程度にしか考えていませんでしたが、質問した瞬間、皆さんが固まり……。間をおいて、「時間が足りません」とのコメント。
ここで、相手のステータスを見誤っていたことに気が付きました。美食倶楽部に来たと思ったらフードファイターがいた感じです。お話をお聞きした方達は「今期だったら70 本は見てる……。」「40 本はみた……。」など口々に呟く、猛者集団でした。
私個人では、生活の中で20分1話×12話、4時間消化できるのは、せいぜい3,4タイトルだと思うのですが70 本、280 時間……。
猛者集団の面々は「空気吸うのと一緒」「子供の頃からの習慣を続けているだけ」「おもしろい瞬間を見逃したくないから面白くなくても見る」とのこと。この方達は、アニメをみるアスリートなんだな…と、とりあえず腹落ちしました。
―皆さんに、それぞれお聞きします!今期一推しは?―
この質問では、いわゆる『ガンダム』などの大ネタ回帰の回答を想定しましたが……。
きもとさん :
アキバ冥途戦争
©「アキバ冥途戦争」製作委員会
うちの師匠はしっぽがない
©TNSK・講談社/春来亭活動写真部
にしぞのさん :
ぷにるんず
© TOMY/ぷにるんずぷにじぇくと・テレビ大阪
thzaqさん :
4人はそれぞれウソをつく
©橿原まどか・講談社/製作委員会はウソをつく
アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】
©Hypergryph / Studio Montagne
たんくさん :
悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました
©永瀬さらさ・紫真依/KADOKAWA/悪ラス製作委員会2022
チェンソーマン
©藤本タツキ/集英社・MAPPA
はるのおとさん :
ペンぺとピンピ
© TAKALAKA
BLEACH 千年血戦篇
©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
いかがでしたか?結構、回答者により一推しに、バラツキが出ました。私の想定では満場一致のアニメが出るのかなと想像していましたが、出るであろうと想定していた『チェンソーマン』、『ブリーチ』は出たものの、未知の作品ばっかりでした。さすがのセレクトです。
ふと気がついたのですが、各々の一推しに、バラツキがあるのは、今回回答してくださったのはDJの皆さんなので、「曲カブリを避けるDJしぐさ」があるかもしれません。「見ました面白かったです~」と、次の質問の前置きにしようと思ったんですがアテが外れましたorz
―大ネタしかみてない担当にこれを推すってやつを教えてください―
気を取り直して、聞きたかった見逃した素敵アニメについて聞きました。教えて頂いたアニメは見ようと思っていたのですが、すでに前の質問で見てないのがほとんどで、どんぐらい細かいのがくるのか、若干ビビりつつ聞きました。
きもとさん : 後宮の烏 9話
宮廷劇大河ストーリー。いわゆるかわいい役のイメージがある声優釘宮さんの3役演じ分けがすばらしい。
にしぞのさん : 4人はそれぞれウソをつく
日常もののアニメ化。リッカ、千代の声優さんが、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の配役、宮下愛、天王寺璃奈と役柄が反対になっている意外性。
thzaqさん : 万聖街 / 羅小黒戦記
アニメ好きでも今や見れる中華アニメ。町並みや文字などで中国製と気づく部分があってもストーリーやキャラクター性は違和感なく、ファンタジーとして受け入れることができる水準にある。万聖街はショートアニメということもあり特にギャグパートのテンポがよく、同時に異種族交流ものの日常系としてのシリアス要素もあり面白い。羅小黒戦記は劇場公開中にスクリーンで見たが、ストーリー・アニメーション共に上質な超大作で中華アニメに対する見方が変わった作品。今回TVシリーズとして放送されたのは良い機会。
たんくさん : ヒューマンバグ大学 -不死学部不幸学科-
意外性がある、オッドタクシーが面白いと思ったひとなら面白いはず。九死に一生を得た主人公の話。
はるのおとさん : ペンぺとピンピ 3話
タイパがいい! 声優・西山宏太朗さんの「保護犬をもっと知ってもらいたい」という思いからのコラボによって生まれたアニメ……らしい。基本は犬2匹のシュールコメディだけど、なぜか3の倍数の話数だけ『ポプテピピック』どころでなく狂ってて、西山さん大丈夫!?となってしまう。特に第3話がものすごい。
―みてみました―
後宮の烏 : 9話
いきなり9話からみましたwOP楽曲のストリングスのアレンジに予算感を感じました。低予算アニメではない予感がします。想像以上にちゃんとしてるアニメだなあって印象ですがまったく初見で、こんなにちゃんと作ってるのに広くリーチしてないとしたらもったいないなあって思いました。初っ端出てくるおばあさんが釘宮さんっぽい。有名な釘宮さん声ではまったくない、別声だけどうまい。長台詞に玄人感あります。お話はこの単話としてはミステリーもの?「釘宮さんがやってる役が釘宮さんの声が聞こえるって悩んでるけど、それは釘宮さんの声でなくて釘宮さんの声だった(ゲシュ崩)」ってオチです。単話で楽しめる話だったしゲシュ崩感ふくめて良く出来てると思いました。きもとさんは声優を切り口にプレゼンしましたが、そこに注目するとストーリーの妙が見えるってのはネタバレせずに推すって特殊能力を持ったアニメ好きのひとならではって思いました。
©白川紺子/集英社,「後宮の烏」製作委員会
4人はそれぞれウソをつく : 1話
1話をみました。日常アニメってかわいいにステータス全振りってイメージでしたがこれは設定がそれを裏切っている、かわいいに向かっていないとこがフックのようです。1話目は時間全部設定の説明だけどそれだけでおもしろい。女子高生あるある風アニメだけど「あるあ...ねーよ!」みたいなのが多分ハマりどころです。忍者と宇宙人がカップリングっぽい?のか掛け合いがおおいです。このお二人が声優ユニット?を組んでいて主題歌を歌ってるとのこと。にしぞのさんによると、このお二人がラブライブと逆転してるのがおもしろみとのこと。ラブライブも見てみます。なるほどラブライブでは引っ込み思案だった声優さんがファンキーな役、ギャルっぽい役だった声優さんがおしとやかをやってるけど、引き続きカップリング?ってとこがフックを生んでるのかと思います。雑にいうと惣流式波感があります。ラブライブでカップリング?になってユニットを組んで、その絡みがまだまだみたいってファンは嬉しいだろうなって感じました。2話もみたけどいわゆるシチュエーションコメディなので、ながら見でストーリーを追わなくてもぱっと30sくらいみると笑える、良く出来てると思いました。
©橿原まどか・講談社/製作委員会はウソをつく
羅小黒戦記 : 1話
1話から見てみます。山水画などもともと超絶技巧がある中国だけに風景、背景がすごいしっかりしています。キャラクタや人物は日本のアニメから一段線を単純化してますが動きは流麗です。ひょっとして主人公キャラ、小黒の線数が少ないのはキャラクタービジネスとして幼児を狙ってるのかもしれません。ジブリアニメを作ってキティちゃんで儲けるって目論見だとすると、面白い狙いだと思います。BGMとSEはおそらく実写映画のもので格調たかいです。アクションについてはいわゆるマトリックス的な、SF実写アクションをアニメ化した構成でアクションは非常にこなれてます。ハリウッドのアクション指導に中国のひとがだいぶ行ってるのの、そういうとこからのフィードバックがあるんだと思われます。アニメ的な止め絵やスローモーションなどが使われてない分作画カロリーは日本より高いはずです。中国が日本のアニメを抜くことを目標に政府予算を投入してるって話は聞いていたんですが、コンテンツとしての日本アニメに競合してくるんでなくて、どちらかというと実写映画の方法論をアニメに持ち込むという部分で日本アニメとの差別化を真面目に考えてると思われます。質としては十分に日本と戦える水準にあると感じました。
©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd
ヒューマンバグ大学 -不死学部不幸学科-
1話から数話みました。いにしえのフラッシュアニメっぽいなと思ったらいにしえのフラッシュアニメの制作会社作、WIKIをみたけどめちゃくちゃ珍しいなりたちの作品でした。テレビプロデューサーがYouTube漫画動画を始めた…てのが原作。世界中のダークな実話を元にしたYouTube漫画をアニメ化って事前情報で見始めたら途中で実話????って?がでます。どうも冒頭から10分くらいのストーリーは前置きで、そこからキャラクターがうんちくを話す会話劇になるようです。キャラが動かないバストアップメインのいわゆる紙芝居アニメなのに、会話劇の情報量が多いのでむしろ絵が動かないことにちょうど良さを感じるようになってきました。何話か見ましたが情報を差し挟むためにストーリーが進行する感じで、学習まんがにつくりが近い気がします。数話だけだとストーリーはまったくつかめずもう何話かみようかな、って気にさせます。ほんとに不思議な作りで、可愛いとか、かっこいいとか、大爆笑ギャグとかないのにもう何話か見ようかなって思う時点で制作の目論見は成功していると思います。まったく同じようなアニメは見たこと無い、とても珍しいアニメですが、作品もだけどアニメを紹介してって言ってこれが出てくる豪腕、セレクションパワーに感心しましたw
©ケイコンテンツ/「ヒューマンバグ大学」製作委員会
ペンぺとピンピ : 3話
1話1分前後と短いので数話みました。ペンぺとピンピってキャラクターがまずあって、キャラクタービジネスを強化する意図でYouTubeショートアニメを作ったんかな?など思いながら見ましたが、可愛さを訴求する気がまったくないっぽいのが謎いです。はるのおとさんによると人気声優さんが保護犬の認知向上を目的に脚本を自ら書いて声をあてた作品とのこと。なるほどグッズ売るためにキャラクターの可愛さを追求…って方向じゃなくて、社会貢献を目的とした耳目を集める意図の企画なんやなと。
おっしゃっていた3話はたしかに…脱構築…って感じでした。アニメ作品というより、メディアアート範疇な気がします。3ヶ月1クールで、週イチ放送されて、円盤と配信、今は海外配信も重要なキャッシュポイントで…みたいなアニメは情報も多く発見に至りやすいのに比べて、その枠に収まらないこういった企画には自力では決してたどり着かなかっただろうなと思います。この作品は声優さんのCSRって側面、コンセプトや人気声優さんが前に立って制作を行うことの意義は非常に腑に落ちましたが作品は全然わかりませんでしたwかなり難しかったです。まさにアニメをみるアスリートだけがたどり着ける、アニメをみるエクストリームスポーツがいかにハードであるかを体感することができた作品でした。
© TAKALAKA
―アニメにおけるレアグルーヴ―
紹介していただいたアニメは、どれもバキバキに「レアグルーヴ的アニメ」で普段なら、発見できなかったものも多かったと思います。
もし、私が偶然発見しても面白さを感じ取れなかった可能性もあるセレクトでした。ですが、各作品のアウトラインや情報・見どころを、一推ししてくれた回答者のプレゼンを聴いた上で、視聴すると面白くなってきた!という不思議な体験をしました。
余談ですが、「レアグルーヴ」という言葉は音楽のサブジャンル名で、「ダンスクラシックス/ソウル」の中で、チャートインしなかった、マニアが発掘再評価したものを指します。 ちょっとおもしろいのが、過去ビッグヒットした楽曲が、今現場で掛かることはあまり無くて、今も現場に残っているのは当時マニアしか評価しなかった「レアグルーヴ」のみであることです。
もしかしたら音楽だけでなくアニメも「今期ビッグヒット!」みたいなものは忘れられ、誰かが熱量をもって語ったマイナー作品が長く記憶に残っていくのかもしれません。
今回取材させて頂いたみなさんが推したアニメの何が「レアグルーブ的アニメ」として残っていくのか、楽しみにしています。
―最後に23冬アニメ何に期待しているか聞きました―
きもとさん : 大雪海のカイナ
弐瓶勉×ポリゴン・ピクチュアズ
© 弐瓶勉/大雪海のカイナ製作委員会
にしぞのさん : 終末のワルキューレⅡ
1期アニメクオリティが高かった
©アジチカ・梅村真也・フクイタクミ/コアミックス, 終末のワルキューレⅡ製作委員会
thzaqさん : もういっぽん!
事前告知の力の入れようをみるかぎりいけるのでないか。
©村岡ユウ(秋田書店)/もういっぽん!製作委員会
たんくさん : アルスの巨獣
アニメオリジナル。壮大っぽい。DMM絡んでいるからゲームにするのかも? DJとしてはOP楽曲、PENGUIN RESEARCHに期待できる。
はるのおとさん : アルスの巨獣
PV見る限り映像がすごそう&OPのペンリサに期待ができる&女性声優ネクストブレイク候補筆頭の羊宮妃那が主演
©DMM.com・旭プロダクション/アルスの巨獣製作委員会
どれも大ネタしかみない自分にとって完全ノーチェックでしたw 今回インタビューに協力頂いたみなさんのツイッターアカウントを追ってると、視聴の参考になるかも。是非是非、フォローしてチェックしてみてください。
お話を聞いた方々
きもとさん/@KmtY_
にしぞのさん/@nisizonohonix
thzaqさん/@SproutsTO
たんくさん/@DJ_TANKU
はるのおとさん/@harunoto
ネバースリープ編集部 / NEVER SLEEP