ーネバースリープ音楽コラム_アニメソングの変遷と現在ー

ーネバースリープ音楽コラム_アニメソングの変遷と現在ー

こんにちは!
ネバースリープ音楽担当です!

アニメ漫画を軸にしたカルチャー情報をおとどけするアカウントとして立ち上がったネバースリープもようやくサイトが立ち上がり、春から少しずつ独自記事を作っていくことになっています。


そんななかの音楽記事一発め、できるかぎり多くのひとが興味をもてるものを…ということでアニメソング、アニソンについてすごいざっくりとしたコラム的なものを書きます。そんなんしっとるわ!みたいな方が過半数だとは思いますが、まとめ記事的なものだと思ってお付き合い頂けるとうれしいですm(_ _)m



ーネバースリープ音楽コラム_アニメソングの変遷と現在ー


【アニソンの変遷と特異性】
アニソンとはその名のとおりアニメ劇中で使われる楽曲。用途としては映画やドラマのサウンドトラックと同様ですが、近年はミュージックビジネスとして映画やドラマとはちがう、なんだかおもしろい状況になりつつあります。どういう経緯でそうなっていったのか、さらっと考えつつ書き出してみます。



【アニメソング黎明期】(1960年代)
アニソンはあたりまえですがアニメとともにうまれました。手塚治虫が日本国内アニメ事業をディズニーを目指して立ち上げたためアニメはまずは児童向けとしてスタートします。

まだアニメに馴染みのない児童を、テレビの前に呼び込む鳴り物として原始のアニソンはありました。そのため歌唱は児童合唱団が担当し、楽曲としてはいわゆる童謡、唱歌とカテゴライズされるものでありました。おかあさんといっしょ楽曲とおなじ効能(テレビ前に子供を引き寄せる)を目的とした楽曲だったっていうと雰囲気がつたわるかもしれません。

■悟空の大冒険





【大人向けというエポック】(1970年代)
アニメ産業が興って10余年、70年代にはいるとアニメのトーンは学生運動などの影響をうけ、怒りやかなしみ、不良や暴力など、すこしダークなテーマも扱うようになってきます。年齢層が上がってきたためアニソンもいわゆる童謡ライクなものから、その時々の流行歌を取り入れたものになっていきました。

この年代のたとえばハクション大魔王opや魔女っ子メグちゃんopなどは、その頃イケてたジミヘン的なファズギターを取り入れた楽曲はファンキーで、今聴くと攻めてるなーと思うんですが当時にとってはむしろ世俗に迎合した、わかりやすいものである言えました。70年代アニソンでその世俗を裏切ったエポックを上げるとするならば今では定番楽曲である、ルパン三世のテーマかもしれません。

そのころ主流だったバンドサウンドと一線を画するジャズフュージョンな曲調にはアニメ全体を流れるテイストと相まって非常に大人感があり、子供向けのフォーマットであるアニメに容赦なく大人をつぎ込んだ違和感から、長く後世にのこるエポックになりました。

■ルパン三世のテーマ



【かわいいのに..のエポック】(1980年代)
70年代後半よりアニメには、ヤマトガンダム等を代表する若年層男子向け作品が増えていましたが、80年代に入るとそのヤマトガンダム的な男っぽい作品一辺倒からDr.スランプやまいっちんぐマチコ先生等、徐々に”男性向けかわいい”とでも言っていいテイストの作品が見られるようになっていきます。

そんな経緯をへて男性向けかわいいのエポック、うる星やつらがはじまります。名作と名高いうる星やつら劇場版2作目であるビューティフル・ドリーマーは、ドタバタコメディ、ラブコメな原作を下敷きにシリアスなメタフィクションを乗っけて、いまでいうまどマギ的なその後パクられまくる構造の元祖となりました。

そのかわいいラブコメ+メタフィクションなアニメは楽曲にもフックをかましまくり、テイストを定めずメタルやニューウェーブ等ハイブロウな楽曲を起用し続けます。

■愛はブーメラン

それ以前の男っぽいテイストへの裏切り、ラブコメ+シリアスとういうメタフィクションの裏切り、かわいいキャラクターにアウトオブキーなハイブロウな楽曲起用という裏切り、という3重にねじれたアニメはその後のアニソンの方向性に大きな影響を与えました。



【アニソンの価値..のエポック】(1990年代)
90年代に入りオタクという言葉がうまれるともにアニメ漫画から生まれたユーザーコミュニティ、コミケや秋葉原等のムーブメントも一般に知れるところとなりはじめ、アニメは押しも押されぬ一大ムーブメントになりました。

そんな中ば1995年、その後27年間現在までカラオケランキングにのこり続けるおばけ楽曲、残酷な天使のテーゼが誕生します。なぜここまで残る楽曲になったのかという分析がけっこうされたらしく、五七調についての言及はネット検索でも多く出てくるのですが、五七調楽曲は過去にも多々ありエポックとはいえず、エポックな点をあえてあげるとするとそれは、”楽曲と映像、音とスイッチングのVJ的なシンク”にあるかもしれません。この、音と映像のシンクの気持ちよさはその後のアニクラというムーブメントにつながっていくのですがそのはなしはまた別のタイミングでm(_ _)m

このあたりから、アニソンにアニメ作品そのものを超える価値を生む可能性があると皆が気づいた感があり、徐々に楽曲制作の体制や予算が上がっていった気がします。

■新世紀エヴァンゲリオン/ Neon Genesis Evangelion OP / Opening | 4K | 60FPS | Creditless



【オタク向けなのに….のエポック】(2000年代)
2000年代にはもうオタクという単語からネガティブな意味はきえ、イケてるムーブメントとして捉えられるようになっていった気がします。

この頃からその後海外でCGDCT=Cute Girls Doing Cute Things=「かわいい女の子たちがかわいいことをする」と呼ばれるようになる、かわいい4コマまんがをもとにしたアニメが多数制作されるようになります。

漫画を原作としたアニメは、原作の絵が高精細であれば劣化と非難され、ストーリーを調整しようものなら改変と非難されがちなのですが、基本ストーリーがなく絵柄も単純な4コマの場合、アニメ化は必ずディティールアップになるという点で、非難の心配が少なく作りやすかったんだと思います。

そんな2007年にアニメ化された、4コマ漫画らき☆すたのOP”もってけ!セーラーふく”もまた、後世に大きく影響をのこしたエポックといえます。その楽曲はCGDCTカテゴリのかわいいトンマナを大きく裏切るハードなミクスチャーロックを取り入れて制作されました。ベースのスラップが高度で笑えます。

この”かわいいアニメだけどバカテク楽曲”というスキームはけいおん!などに受け継がれ、アニソンが主体のアニメの変遷につながっていきます。

■らき☆すた OP もってけ!セーラーふく [HD]



【その後】2010年代
アニメのなかで楽曲が非常に重要な位置をしめるようになった2000年代、おなじく音楽業界におきた重要なトピックにAKB48の活動開始、アイドルブームがあります。アニメもその後そのブームをフォローするように、アイドルアニメといっていいものを制作するようになりました。

声優さんがアニメ作中と同じ楽曲を、同じ衣装、振り付けでリアルライブをする、というビジネスモデルは莫大な高収益をもたらし、放送終了後もイベントが打ち続けられることで作品のコンテンツ寿命をも大きく伸ばしました。アニソンがアニメビジネスのなかで占める重要度はここで急激に大きくなります。2018年には支出喚起力ランキングでトップの嵐についでアイドルマスター、ラブライブが2位3位。事業規模は2つ合わせて500億を超え、2タイトルでアダルトビデオ国内市場全体よりでかい規模に成長しました。

10年代にはあまりにも高度な良曲が大量生産されるようなってしまったため、エポックをえらぶことはできませんが、高度さの到達点という意味合いで1曲、そのアイドルマスターからピックアップしておきます。

■【アイドルマスター】「クレイジークレイジー(M@STER VERSION)」




【いま】2020年代
そういった経緯で現在アニメのなかでアニソンの重要度は非常にたかく、さらなる利益と制作予算を確保するべくアニメ制作会社が声優、楽曲制作を外注から内製に切り替えるといったうごきがみられるようになりました。現在1シーズン3ヶ月で放映されるアニメは60強。1作品oped2曲、放送12回、3ヶ月でなんと1440回テレビでアニソンが流れています。音楽番組が少なくなった今、顧客接触回数でアニメ楽曲、非アニメ楽曲との差は非常にでかく、今後もミュージックビジネスのなかでアニソンの優位性は増していくと予想できます。

昨年21年の邦楽TOP50のうち12曲がアニソン。現在24%の割合ですが、この内製化による予算増、タッチポイントの独占という2つを要因として、おそらく25年辺りまでには50%に限りなく近づき、アニメソングが最大のミュージックビジネスになるのはそう遠くないはずです。