異色のアーティストが集結した対バンイベント「七日目のパレード」

2022年12月2日、バーチャルアーティストの小宵がボーカルを務めるヘヴィロックバンド、貝と蜃気楼が新宿club SCIENCEで異色の対バンライブ「七日目のパレード 」を開催した。出演アーティストは、JOHNNY HENRY、the afterglow、BOOGEY VOXX、そして貝と蜃気楼の4組。バンドサウンドを、生演奏でライブする機会はまだまだ少ないバーチャルシーン。しかし、今回のライブは、実験的というよりかは、違和感もなくハイクオリティなライブパフォーマンスを最初から披露していた。そんな歌舞伎町のど真ん中で、リアルとバーチャルが混ざり合った異色のライブイベントのレポートをお届けする。







トップバッターで登場したのは、VR上で活動するバーチャルブルースバンドJOHNNY HENRY。まさかのリアルでの登場で、開幕からサプライズを演出。いい感じの緊張感が漂う中、1曲目「Paint it Blue」からライブが始まった。ステージ上もブルーライトが全体を覆い、ファンキーな楽曲との相性は抜群。「もっと前に来ていいんだよ!」というYAMADAの言葉と同時にフロアの熱気が上昇し、開幕から切込隊長らしい勢いと、情熱的なパフォーマンスが1曲目から炸裂していた。そして、MCを挟んだ後に「Emotion」と「Only You」を続けて披露。JOHNNY HENRYらしい、抜群のノリ心地とシンプルかつ芯の込もったメッセージ性がフロアを沸かせていく。

再びMCでJOHNNY HENRYらしいゆるいトークが展開され、4曲目「スーパースター」を披露。「ノリよくて最高!」というシャウトの通り、フロアの熱気は最高潮を迎えるほどの盛り上がりを見せていた。そしてラストチューンは「愛にすべてを」。ラストのコールと同時に歓声が飛び交い、ドラムの音に合わせて「みんなの楽しみたいように楽しんで!」と言葉を投げかける。軽快なギター音が気持ちいいくらいに流れたかと思うと、JOHNNY HENRYの魂の叫びが慌ただしく飛び交う。オーディエンスも一緒に口ずさむ光景が広がり、フロアもラストにふさわしく一体感がより一層強まったように感じた。普段は、VRやバーチャルの姿でライブを行うJOHNNY HENRYだが、今回のライブで新たな世界観を見せることができたのではないだろうか。





2番手に登場したのは、the afterglow。JOHNNY HENRYが作りあげたピースフルな空間をエモーショナルに一変させる。1曲目に披露した「アイオイ」は、激しめのギター音に、哀愁漂うメロディが怒涛のように展開され、自然と体が動いてしまうほどのグルーブが覆い尽くす。ギターを軸としたハードな演奏に相まって、詩的な歌詞と優しいメロディがとにかく映える。そして、立て続けに「風花」を披露。タイトルとは裏腹に、曲調、演奏、そしてパフォーマンスに激しさが増していく。キャッチーなギターに合わせて、手拍子を促し、一気にギアを上げていくのがはっきりとわかった。the afterglowが放つ熱気に圧倒されながら、ただ純粋に音に身を委ねるような感覚に陥ってしまう。

3曲目「雨色ランドリー」では、雨音とジメッとした雨のエフェクトが演出され、楽曲の持つ世界観に一気に引き込まれてしまう。そのまま鳴の優しいメロディと歌声が響き渡り、サビに向けて徐々に壮大に展開されていく。楽曲の強弱でオーディエンスを揺さぶる見せ方は圧巻で、続いて披露した「​​サビオト」では、先ほどの楽曲とは打って変わって妖艶なメロディが鳴り響いた。the afterglowの凄さは、サウンドの振れ幅とメロディの一貫した優しさだろう。楽曲の雰囲気が変わっても、メロディや歌詞は変わらずスッと耳に入ってくる。そんな余韻を感じる暇も与えず、「もっともっと楽しんでいこうぜ」という言葉と同時にラストチューンである「爛然と」が披露された。言ってしまえば、圧倒的アウェイでのライブだったにも関わらず、そんなことは微塵も感じさせないパフォーマンスを終始見せてくれた。ライブや楽曲も含め、もっと見ていたいと思える空間だった。





開幕、Ciの「みんな調子はどうだい?」の掛け声にオーディエンスの熱が一気に高まるのを感じた。ある意味、3番手として登場したBOOGEY VOXXもこの日はアウェイと言っても過言ではないだろう。バンドサウンドを軸としたライブイベントで、ライブ百戦錬磨の2人がどのようなライブを展開させてくれるのかも見モノだった。1曲目「Go!!Go!!Undead!!!!!」が流れると同時に、フロア全体が飛び上がる。ドスの効いた「みなさんこんばんわ!」という掛け声に反応して、オーディエンスも手を振って応える。楽曲のパワーに限らず、ピンポイントな煽りでフロアを沸かせていくのもBOOGEY VOXXのパフォーマンスの特徴だ。MCで「いつもと違うBOOGEY VOXXを最後まで楽しんでください」と言った通り、「あいうえこさん」など、バンドサウンドを意識したセットリストがこの日はふんだんに見ることができた。

軽快なMCで会場を沸かせながら「今日はロックをやらせていただいております」と語った矢先、「One's-room Treasure」で一気にクラブのフロアへと変貌させる。心地良いグルーヴと淡いブルーライトに合わせて、オーディエンスも小刻みにリズムを刻んでいく。そして再びMCを挟んだ後、「どの現場でもだいたいこの曲をやってます。最後までバッチリ盛り上がってください!」というFraの掛け声とともに、ラストチューン「D.I.Y」を披露。バンドサウンドを意識したセトリだったとはいえ、最終的にはBOOGEY VOXXらしい世界観へと誘導させていく見せ方はさすがだった。普段クラブのフロアでしか見られない”ノリ”や一体感を、ライブハウスでも関係なく巻き起こしていた。個々のポテンシャルももちろん重要ではあるが、この日ばかりは、ライブの経験値の凄みを体感することができた。





「七日目のパレード 」のトリを飾ったのは、もちろん貝と蜃気楼。この異色のライブ企画の主催であり、キーパーソンだ。開幕「悪夢、正夢」の始まりと同時に、まさしく轟音とも言える響きがフロアを塗り潰していく。「貝と蜃気楼です!よろしくお願いします!」の掛け声と同時に、不気味なほど軽快にリズムを取っていく小宵に合わせて、オーディエンスもつられるように体を揺らし出す。あっという間に曲が終わったと思ったら、小宵のシャウトと同時に「パルプフィクション」が始まった。唸るような轟音が鳴り止むことはなく、堂々としたパフォーマンスはまさに圧巻。そんな轟音とは裏腹に、小宵の持つ世界観の魅力として、静寂的な要素も特徴的だ。曲中で披露するポエトリーもそうだが、淡々と言葉を連ねるような表現は、ヘヴィなバンドサウンドにいい感じのスパイスとなっている。感情のアップテンポが表現力に拍車をかけており、「七日目のパレード 」ではそれが顕著に見られた。

「鉄と胎生」とヘヴィな楽曲が続き、4曲目には先ほどライブを行ったBOOGEY VOXXのFraが登場。「ゴースト・ハイド・フェイト」を異色の2人が歌い上げる。声を捲し上げるように歌う小宵と、がなるようにラップを刻むFraの組み合わせのパフォーマンスは、思わずステージに釘付けになってしまうほどエッジが効いていた。そのままメンバー紹介が行われ、「スカーレット・パレード」を披露。中毒性あるメロディラインが特徴的で、小宵の高音が究極に映える楽曲だろう。そして最後のMC、小宵の「ここまで続いてきたお祭りもお終いの時間ですね」という言葉を聞いて、ライブの終わりを実感する。アンコール前の最後は「落日」を披露。今までとは打って変わって、優しめのサウンドとポエトリーがアンニュイさを演出する。段々と力強くなる歌声を聴きながら、あまりにもの振れ幅に、いい意味で掴みどころのない貝と蜃気楼の世界観を味わうことができた。アンコールのMCでは、ライブにおける不安を吐露する場面があったり、人間味ある話を聞くことができた。そして最後の曲「安息日」を披露。バンドとして、楽曲が増え、ライブを重ねるごとに、表現力が増しているのがわかるライブだった。これからどんな世界を見せてくれるのか、とにかく期待が膨らんだ。



JOHNNY HENRY


ボーカル、ブルースハープのYAMADAをリーダーに、 ギター、藍葉じるあ ベース、Moiri、 ドラム、Yuki Hata からなる4ピースのVRブルースロックバンド 2019年、9月 「遠隔でのセッションにて生演奏を行うVRバンド」としてVRchatを中心に活動を開始 以後、様々なライブを行う中、 2020年11月渋谷TANPEN映画祭 × させぼ文化マンスのコラボイベント「楽園祭」や 同年12月ニッポン放送「VRミュージックソン」でのライブ出演など VRアーティストを代表する1組として活動を展開している。

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the afterglow


"沈みゆく陽の光のように、心焼き付く瞬間を響かせる。"afterglow【名】残光、夕陽、沈みゆく陽の光、荒々しくも切なき感傷と美しさが混ざり合い、それでいてどこかノスタルジーを感じるメロディーを軸に構成された楽曲たち。誰もが「つまらない」と嘆くような日々の中にだって、切なさや美しさを感じさせてくれるような夕陽があるように。日常の中にある想い、胸の内で溢れる言葉と感情のその心焼き付く瞬間を今、響かせる。

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BOOGEY VOXX


『#いきてるみんな、生きてるか!?』 BOOGEY VOXXとは……、 ボーカルでキョンシーのCi[シィ]と ラッパーでフランケンのFra[フラ]からなる 2人組のバーチャルアンデッドユニット。 2020年3月のデビューから怒涛の勢いで勢力を拡大し、 関与した楽曲は約200曲、チャンネル登録者は100,000人を超え「最強の個人V」の肩書をほしいがままにしている。ホロライブEN・Mori Calliopeとのコラボレーションや、麻雀リーグ「神域Streamerリーグ」への参加、自主制作による全国クラブツアーなどインターネットから現実を縦横無尽に駆け巡る!

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貝と蜃気楼


耳を劈く轟音に物語性の高いリリックを乗せて鳴らすオルタナティヴ・ヘヴィ・ロックバンド。そのサウンドはスラッジコア、ブラックメタル、ハードコアパンク、シューゲイザー、USインディーなど様々な音が渾然一体となった唯一無二のものだ。メンバーは、小宵(Vo)、KYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶ(Gt)、ヨシキ(Gt)、MiNT(Ba)、634(Drs)の5人組。その内、小宵とKYOTOU O-EⒶST SHIBUYⒶの2名がVtuberという異色の構成だ。2022年4月に1st EP『人魚の骨』、同年10月に1st Album『七日目の街』をリリースし、また2022年5月にはおやすみホログラム主催のライブ「打奏驚蛇」に出演、同年12月にはレコ発ライブ「七日目のパレード」を主催するなど、ステージパフォーマンスにも力を入れており、破壊的な演奏が評価されている。最近ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がホストのpodcast AVMTのVOL.36にて1st Album 所収「安息日」が週のプレイリストに選曲されるなど、その存在感はあらゆる音楽シーンにおいて日々いや増しつつあり、今後も決して目が離せない。

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ネバースリープ編集部 / NEVER SLEEP