「これから先もずっと、みんなの応援が私の力になる」MaiRメジャーデビュー記念インタビュー前編

4月26日にアルバム『未完星』でVictor Entertainmentからメジャーデビューしたバーチャルロックシンガー・MaiR

2018年7月に星乃めあとして活動を開始。これまでも『START!!』と『paint the STAR』、2つのアルバムをリリースし、その歌の人気と実力を高めてきた。

『未完星』に込めた想い。そしてメジャーデビューを果たした今、これまでを振り返ってMaiRが語ることとは。

取材・文:森山ド・ロ
取材・編集:ゆがみん



メジャーデビューは約束された将来ではない





──メジャーデビューすることになって、今の率直な気持ちを聞かせてください

MaiRたぶん私が1番実感がないです……。メジャーアーティストに憧れたり目指したりしつつも、メジャーデビューはすごい人がする、自分からは遠いものだと思って活動してきました。

ふくぶちょーは「ちゃんと頑張ってきたからだよ」って言ってくれるんですけど、いまだに実感がないです。「私でもできるんですか?」みたいな。

──メジャーアーティストになりたいと志したのはいつ頃なんですか?

MaiR気持ちだけは最初からありました。もともと「アニソンを歌うようになりたい」という目標を掲げているんです。けど、主題歌を歌ったりアニメ作品に携わることができるのは、やっぱりメジャーアーティストじゃないと難しいとはわかってました。

夢を叶えるためにも、尊敬してる歌手のみなさんのような存在になる意味でも、メジャーデビューは1つの大きなゴール地点なのかなってずっと思っていました。

──プロデューサーであるふくぶちょーさんとしては、最初からメジャーデビューを意識していたんですか?

ふくぶちょー正直まったくなかったですね。もちろん、MaiRは昔から「メジャーデビューしたい」とずっと言っていたので、それは叶えてあげたいなとは思ってはいたんです。

けど、実際にメジャーデビューするにはどうすればいいのか検討もつかなかった。今は昔と違って、メジャーデビューもその位置づけがあやふやなものになっている。ちゃんとネットでファンを増やしていって、結果として付いてくるいろいろなものの中の一つがメジャーデビューなのかなって思っていたんです。そんな中でVictorという、名の知れたところからお声掛けをいただいたのは本当に嬉しいなと思います。

──デビューすることで、今までと変化するところはどこかあるんですか?

MaiR大きいことに挑戦できる環境になったり、いろいろな人に私のことを知ってもらうきっかけが増えたり、そういう面では大きく変わっていくと思います。けど、私自身は全然変わらないです。

ふくぶちょープロモーションや活動自体も幅が広がっていくと思います。ただ、メジャーデビューで売れなかったらダメだし、これからどうなっていくのかは正直見えない部分もあります。

MaiR「メジャーデビュー=うまくいく」とか、約束された将来とか、そういうわけではなくて、頑張らなきゃいけないことには変わりない。もちろんこれから先もずっと、みんなの応援が私の力になるんだよというのはファンのみんなにも伝えてますね。

「こんな風になれたらいいのにな」という変身願望が始まり





──MaiRさんが音楽に触れたきっかけを教えてください

MaiRもともと音楽に興味があったわけでも、家族の中に音楽好きがいたわけでもありませんでした。そもそも私はめちゃくちゃ恥ずかしがり屋で、人前で何かをすることが苦手だったんです。なので、昔は漫画家を目指していたんですよ。

音楽に興味を持ったきっかけは、友達に誘われて初めて行ったカラオケでした。一緒にカラオケに行った友達がめちゃくちゃ歌が上手で、かっこ良すぎて衝撃を受けました。私もこんな風に歌えるようになりたいって思ったのが、音楽に興味を持った瞬間でしたね。

──恥ずかしがり屋ということは、カラオケも緊張したんじゃないでしょうか?

MaiRカラオケも苦手でした。私はおばあちゃんっ子だったので、家族でカラオケに行ってもずっとおばあちゃんの背中に隠れてました。「マイク持たないで歌うから!」って(笑)。

当時私はジャニーズがすごく好きだったんですよ。なので誘われたときも、KAT-TUNさんやKinKi Kidsさんを家で練習してから行きました。男性の曲ばかり聞いてたんですよね。

──そこからどのように音楽の道に進んでいったのでしょう?

MaiR友達はロックバンドが好きだったので、おすすめのバンドやアーティストを教えてもらったり、自分でも音楽を探して友達と教え合ったりするようになりました。カラオケにも頻繁に行くようになって、一緒にデュエットもしましたね。

音楽番組やライブ映像にも興味を持って見ていくうちに、なんてキラキラしてるんだと思うようになりました。舞台に立って人を感動させたり、楽しくさせる人ってかっこいいなと思ったんですね。

でも恥ずかしがり屋で引っ込み思案だったのもあって、「やりたい!」というよりは、「自分もこんな風になれたらいいのにな」という変身願望みたいなところが始まりでした。

──恥ずかしがり屋で引っ込み思案だった性格から、人前で歌えるようになったきっかけはなんでしたか?

MaiRカラオケに私から友達を誘うことができるようになったことですね。数をこなしていくうちに、褒めてもらえることが多くなって、自分に自信を持てるようになって克服できました。

──学生時代、カラオケ以外にバンドや吹奏楽といった音楽活動はやられてたんですか?

MaiR全然やってませんでした。だから他の人に比べたら歌手を目指すこと自体、遅い方なのかなって思いますね。

歌手を目指し始めた当時は、まだ中学生だったんです。勉強や部活が忙しかったので、あくまで将来の夢として頭の片隅にあるくらいの感覚でした。

父や母は私の好きなことを自由にやらせてくれて、歌手を目指すことも普通に応援してくれました。

スカウトから始まる売れないバンドマン生活



──なるほど。では、そこから本格的に歌手を目指していくんですね

MaiRそうですね。当時は、声優さんが歌を歌うことが主流になり始めた頃でした。なので、声優でありつつ歌も歌う、そういう方向を目指してたんです。

最初は、ライブハウスが企画しているようなアマチュアのシンガーイベントに出演するようになって、アイドル的な感じで1人で音楽活動をしていました。その頃は右も左もわからず、楽器すらもできなかったんです。

オーディションも受けながら活動をしていたんですが、地下で歌っているところをふくぶちょーに見つかって、「一緒に音楽やらない?」って声をかけられたんです。でも最初は断ろうと思ったんです(笑)。知らない人からの連絡だったから、怖いなぁと思って……。

でも、そこから「1回話しましょう」って言われて、バンドを組むことになりました。それから、売れないバンドマンとしての生活が始まりましたね。

──ふくぶちょーさんはバンドのボーカルとしてMaiRさんをスカウトをしたんですか?

ふくぶちょーそうなんです。自分もずっとバンドをやっていて、ボーカルを探してたんですよ。

かっこいい女性ボーカルのバンドをやりたいとずっと思っていて、そういうボーカルをピンポイントで探してました。なので、とりあえず「シンガーが歌っているイベントを見よう」と思ってライブハウスに行ったら、たまたまこの子がステージで歌っていたんです。

なんていうか……変な衣装だったんですよね。うんちがプリントされた服を着て歌っていて、「なんだこいつは」ってなったんです。

あと、この子がステージで歌ってたのが、涼宮ハルヒの『God knows...』って曲だったんですよね。あれが僕の中ですごく好きな曲というか、大事な曲なんですよ。だからめちゃくちゃ惹かれちゃって。

実際に歌っている姿も歌も素晴らしくて、「こいつしかいないだろう」みたいな。それから探して、メッセージを送りました。

MaiR現場で声をかけてくれてたらまだ良かったのに。

ふくぶちょー確かにそうだよね(笑)。でもその時は俺も勇気がなかったのよ。





バーチャルの世界には、正直あまり乗り気じゃなかった





──それでバンドマン生活が始まったというわけですね。そこからどういう経緯でバーチャルの世界に飛び込むことになったんでしょう?

MaiRバンドをやっていた頃、私はパソコンも触れないし、ネットサーフィンしかできないみたいな感じでした。ある日、ふくぶちょーから「今、面白いカルチャーがネットにあるんだよ」と教えてもらったのが「Vtuber」でした。

ふくぶちょー僕はもともとボカロPをやっていたので、ネットの音楽やアニソンが結構好きで、そういうジャンルの盛り上がりを嗅ぎつけるのは早い方だったんですよ。

その当時活動していたキズナアイさんを始め、ときのそらさんやYuNiさんが歌っている姿を見て、可能性を感じたというか。ボカロブームの時もそうなんですけど、なんか新しいのが来るぞ!みたいな気がして。面白いことになる、と直感的に感じました。

MaiRそれから、音楽の届け方を変えてみないかという話になりました。私自身、Vtuberをきっかけに初めてちゃんとネットの世界に足を踏み入れたんですね。

1人で歌っていた時も、ネットに歌を投稿することもほとんどしたことがありませんでした。やり方もわからないし、マイクも持ってないような状況だったんですよ。

ふくぶちょーに「バーチャルの世界がある」と教えてもらった時は、正直あまり乗り気じゃなかったです。「バンドやるんじゃないんすか……?」みたいな。

でも私自身、なんとなく「このままじゃダメだ」と思ってました。それで「今はこういう活動の仕方、存在の仕方があるんだ。挑戦してみよう」とバーチャルの体を作ったんです。実際に始めたら、びっくりするくらい反応をもらえて、それで楽しいと思って続けるようになりました。

──最初バーチャルでの活動に乗り気じゃなかったのは何か原因があったんでしょうか?

MaiR意地を張っていたんだと思います。新しいものには批判がつきものじゃないですか。たぶん私がそちら側だったんですよね。

実際にやってみて、私みたいな恥ずかしがり屋でも、バーチャルにいた方が恥ずかしさを捨てられると思って、徐々にノリノリになっていった感じですね。

伸び悩む時期でも、必ず誰かが助けてくれた





──バーチャルでの活動を始めるにあたっては、活動方針や決め事を定めたんですか?

MaiRVtuberになりたくて活動を始めたわけではなく、何にも決めず勢いだけで始めました。とりあえずやってみようか、みたいな。

ただ、ちょっとしたチャレンジのつもりが本当にたくさんの反応をもらえたんです。だから序盤の方から完全に振り切ってましたね。自分の夢に1番可能性を感じて、頑張った方がいいと初期の段階から思いました。

──では実際にバーチャルとしての活動を始めて、困難やぶち当たった壁はありましたか?

MaiR実はそんなにありませんでした。バーチャルになってから始めたカバーも、ふくぶちょーが音楽ができる人なので、自作でカラオケを作ってふくぶちょーの家で収録ができたり、スタジオをレンタルして2人で割り勘したり。いい感じに活動ができていたと思います。

ふくぶちょー最初の時点で、今までやってきたことを活かしながら活動ができていました。動画や画像の編集も、ボカロPの経験がありましたから。

MaiRでも最初の方は、可愛い声を出そうと頑張ってたんですよ(笑)。当時は「可愛いが命」「可愛くキュルン」と意識して歌ったり活動してました。けど、徐々に自分が得意だったものを取り入れるようになりましたね。





──YouTubeに投稿するようになって、数字への意識など変化や葛藤はありましたか?

MaiR初期は私がネットの世界を知らなすぎて、何をするにも「反応もらえた!やったー!」という感じで全部嬉しかったですね。

活動を重ねていくと、やっぱり伸び悩む時期もあるじゃないですか。そういうときでも、必ず誰かが助けてくれた。例えばアニキ(コーサカ)や姉さん(朝ノ瑠璃)がコラボ誘ってくれたり、手を差し伸べてくれたりした。だから、そこまで大きな挫折をしたことはあまりないかもしれないです。

未完成はネガティブな言葉ではなく1つの表現





──メジャー1stアルバム『未完星』はメジャーになってリリースされる初のアルバムです。アルバムのコンセプトについて教えていただけますか?





MaiRメジャー前に出した2枚のアルバムも、メジャー1stアルバムも、いろいろな挑戦をしているという意味では変わらないです。

1stの『START!!』は、ポップな感じでバランスのいいアルバムだなってすごく思っていて、2ndの『paint the STAR』は、ちょっとロック色が強いけど、愛してもらえるような楽曲がたくさん入ってる1枚なんですね。

『未完星』は、ロックを軸にバンドサウンドを大切にしつつ、いろいろな方向にチャレンジをした作品です。例えば歌声や作詞、あとは全編英語の曲があったり。メジャー1stアルバムなのに、今まで出した中でもいろいろな方向に尖っている作品だと思います。1番濃いです。

──タイトルの『未完星』は、どういった由来でつけたんですか?

MaiRメジャー1stアルバムとして、成長した自分を見せたいけど、それでもまだまだ自分は未完成だよという気持ちも込めて名付けました。

私自身にはまだまだ未完成な部分があります。けれどいろいろな人に出会ったり、支えてもらったり、ファンの人達に見つけてもらったことでここまでやってこれたんですね。未完成という言葉を「完成されていない」とか「完璧じゃない」というネガティブな言葉として捉えるのではなく、「未完成」という表現の1つとして、このアルバムの制作に挑めたかなって思っています。



----------「MaiR」プロフィール----------

『宇宙イチのキミだけのスーパースターになる!』を目標に2018年7月よりバーチャルロックシンガーとして活動を始めた。

キュートなルックスや"アホの子"な言動からは想像できない力強いロックな歌唱スタイルが特徴で、その歌声とパフォーマンスはオーディエンスのハートを自然と前へ向かせる。

インディーズでリリースした2nd ALBUM「paint the STAR」はiTunesロックランキングで1位に輝いた。

自身のYouTubeチャンネルは登録者数150,000人を超え、投稿したカバー楽曲は200曲に迫る。

活動5年目を迎えた現在も衰えない勢いを見せつけ、リアルとバーチャルを歌で繋ぎ紡ぐライブアーティストとして高い注目を集めている。

なお、IQは2万個である。


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ネバースリープ編集部 / NEVER SLEEP