4月26日にアルバム『未完星』でVictor Entertainmentからメジャーデビューしたバーチャルロックシンガー・MaiR。
2021年3月、「星乃めあ」から「MaiR」へ名義を変更。その裏の葛藤やデビュー後の今、MaiRが見据えるアーティストとしての未来とは。
3rdワンマンライブ「ASTRO ROCK」直前。その胸の内を聞いた。
取材・文:森山ド・ロ
取材・編集:ゆがみん
「この人は嘘がないんだな」って思ってもらえるシンガーになっていきたい
──MaiRさんが活動していく上で、影響を受けたアーティストやVTuberはどなたですか?
MaiR:私がかっこいいロックシンガーになりたいと思ったのは、LiSAさんの影響が大きかったですね。
バーチャルで活動を開始した当時は、周りに力強く歌う女性ロックシンガーの方があまりいませんでした。そもそもVtuberってバンドサウンドよりもクラブミュージックの方が相性がいいって考えられていましたよね。
なので、もちろん尊敬しているVtuberの先輩方はたくさんいるんですけど、この人みたいになりたいというのはなかったかもしれないです。逆に「Vtuberでロックシンガーといえば星乃めあだよね」と言われるようなポジションに立ちたいと考えていました。
──第一人者になろうとしていたんですね。LiSAさん以外にリアルな世界で影響を受けた人はいますか?
MaiR:UVERworldやサンボマスターが大好きです。熱いパフォーマンスや楽曲を歌っているところに影響を受けていますね。
私自身のライブのスタイルや音楽も、泥臭さや着飾らないかっこよさで、人の心を動かしたいという気持ちが強いです。活動を続けるなかで、自分らしい部分や、好きになってもらってる部分って何なんだろうって考えたことがあるんです。
泣いてるところ、悔しいところも全部見せていくし、そういうがむしゃらな側面を発信して、実際に成長していく姿もライブや音楽活動を通して見せていきたいなと思ってます。
普段の言葉からライブをする姿を見てもらった時に、「この人は嘘がないんだな」って思ってもらえるシンガーになっていきたいです。
前の方が良かったと思わせない活動を、自分が見せていけばいい
──2021年3月「星乃めあ」から「MaiR」へ名義の変更をされていますよね。経緯を教えていただけますか?
MaiR:星乃めあの時は、衣装や話し方が、どちらかというとアイドル路線でしたよね。初めてのリアルライブでドレスを着ることになったんですけど、「ドレスは可愛いし、とりあえずこれでいってみよう」ってそのまま活動していました。
そんな軽いノリで衣装を決めたところ、アイドルっぽいイメージがいつの間にか定着し始めたんですよね。その頃は、バラエティ系の企画に呼んでいただくことも多かったんです。でも活動を続けていくうちに、「私はもっと別の形で活動したい」という気持ちが徐々に芽生えてきました。
当時もLiSAさんに強い憧れを抱いていて、自分もかっこいいロックシンガーになりたいんだと自覚するようになりました。もっとちゃんとシンガーとしてのポジションを確立したいと思って、初めてのクラファンでアルバム制作や、ストレッチゴールで新衣装制作に挑戦しました。
ふくぶちょー:個人勢から現在の会社に所属、運営する形になりました。会社的にポップなアイドルとして星乃めあを打ち出していきたいという方針だったんですよね。
モヤモヤしたこともあったんですけど、色々な気付きがありましたし、そのおかげで私達のやりたいことの自覚が芽生えていきました。そういう経緯もあり、お互いが思う「かっこいい」を追求していく方向にシフトしていこうと話をして、名義変更をすることになりました。
MaiR:名義変更する時も、めちゃくちゃ話し合って、ぶつかりました。
星乃めあとして活動してきた期間も自分達にとっては長かったし、ファンのみんなはどう思うかという心配もあったんです。
衣装もガラッと変わることになるので、「自分達はこうしたいけど、でもみんなはどう思うかな」とすごく悩んだんですよ。ただ結局は、自分が「こうしたい」という気持ちがあるならそれで突き進んだ方がいいと考えるようになりました。とことんやって、前の方が良かったと思わせない見せ方や活動する姿勢を、自分が見せていけばいいと思うようになったんですね。
いっぱい悩んだんですけど、みんなを不安にさせないように音楽でちゃんと見せていこうという気持ちがすごく強くなりました。
──そうした変更の際、特に意識したことはなんでしたか?
MaiR:新衣装のお披露目のタイミングやライブの見せ方ですね。
YouTubeライブにするにしても、いろいろなものが変わってもみんなに応援してもらえるようにと思って、いろいろと考えてステージを作りました。私が掲げてる夢はものすごく大きいんですけど、夢に近づくたびにファンのみんなに「遠くなってしまったな」って思われたくなかったんです。
名前や姿が変わっても、自分がこうしたいというのがちゃんとはっきりあったから、嘘をつかずに真っ直ぐ伝えたら、みんなはわかってくれるはずと思って、とにかくみんなを信じてました。
周りの上手さに気づくようになったからこそ、落ち込むことも増えた
──「星乃めあ」から「MaiR」へと変わって、歌唱的や制作のところで、技術的なところもそうですし、精神的に変化した部分はあるんですか?
MaiR:大きな変化で言えば、星乃めあ時代の終わり頃からボイトレに通うようになりました。今までずっとレッスンを受けたことがなくて、歌は全て独学、自己流で歌ってきたんです。けど、歌の壁にぶち当たってしまって、成長するにはただがむしゃらにやっていては無理かもしれないと思うようになりました。
実際にボイトレを受けてみたら、自分ではできないことが沢山あって、びっくりしたというか、この感覚が大事なんだろうなと気付かされました。それまで気にしてこなかったんですが、自分の声を分析しながらやってくのってすごく大事なんだなって気づきましたね。実際、表現の幅が広がったと思います。
先生も今のロックな歌い方を長く続けられるよう指導してくれるんです。私の曲って力強く歌ったり、叫ぶ表現がすごく多くて、今までどうしてもかなり喉を消耗してきたんですね。力の抜き具合や喉を痛めない発声の仕方を身につけられるように、今も指導してもらってます。
──精神面では何か変化はありましたか?
MaiR:精神面は……変わっていない気がします。いや、むしろだんだん弱くなってる気がします(笑)。
最初の頃って、何も知らない強さみたいなものがあったと思うんですけど、活動を続けていると、周りの上手さとかいろいろなものを感じ始めちゃうんですよね。気づきがすごく増えて、例えば人気の人の何がすごいのかというのも、いい意味でちゃんとわかるようになってきたんです。ちゃんとわかるようになってきたからこそ、落ち込むこともすごく増えましたね。
ふくぶちょー:今までは誰かを追いかける存在だったけど、段々と自分が誰かに追いかけられる存在に変わってきたんだと思います。後ろから来る後輩がすごく気になるようになったんです。
MaiR:やっぱり自分の根本として、変身願望が強いんです。シンガーの世界の中でもちゃんとかっこよくありたいって気持ちがすごくあるんですよ。かっこ悪いところを見せても、ちゃんとかっこいいみたいな。そういう思いが段々と大きくなっていってる気がします。
あとは、初めてやることが段々と少なくなってきてるのもあります。1stライブをやって、2ndライブもやって、アルバムもそうですね。1stの時は、緊張しつつも挑戦って感じで楽しめてた部分はあるんですけど、今だと、「ちゃんと結果を残さなきゃ」という気持ちも芽生えていて、前回を超えたいという気持ちが強いんですね。そういうところも影響してるのかなって思います。
──ちなみに、悩んで考え込んでしまった時は、どうやって自分を奮い立たせてるんですか?
MaiR:それがずっとできないんですよ。1度落ち込んだら、無理にあげようとしないです。無理に頑張ろうとするともっと悲しくなっちゃうので、ひとしきり泣きます。
「Step up Super Star!!」は泣きながら録った
──今まで出演してきて印象深いライブやイベントはなんでしょうか?
MaiR:「TUBEOUT! SESSIONS」は絶対に忘れられないイベントですね。
コーサカさんに見つけてもらって呼んでいただいたんですけど、今思うと意味がわからないですよね。だって、共演者さんが、コーサカさんとときのそらちゃんと朝ノ瑠璃姉さんだったんですよ。イベントが発表された時も、「星乃めあって誰?」みたいな感じだったんです
けど、たくさんの人に知ってもらうきっかけになったし、今まで応援してくれてたみんなが直接イベントに足を運べる機会にもなりました。
──楽曲制作における一貫したこだわりや意識していることはありますか?
MaiR:バンドサウンドを軸に置きたいというこだわりはありますね。例えば今っぽい感じにしつつも、ちゃんと楽器が聞こえるようにするとか、そういう意識で取り組んでいます。
メッセージ性に関しては、私が作詞をする場合は、等身大で共感してもらいやすい歌詞を書くことが多いです。私が作詞をするには基本的にふくぶちょーが作曲をする場合なので、どういう曲にしたいか、どういう歌詞の方向にするか、つくる前にしっかり話しています。とはいえレコーディングの段階で変えることもあって、それこそバンドの曲づくりのように自由に制作することが多いですね。
──オリジナル楽曲で印象深い曲はなんでしょうか?
MaiR:「Step up Super Star!!」「Shout My Life」「未完成アンチテーゼ」ですね。3曲とも、大きなきっかけや節目にリリースした楽曲なんですよ。
「Step up Super Star!!」は、シンプルにファーストシングルというのがすごく大きいです。「TUBEOUT! SESSIONS」で初披露したという思い出があったり、レコーディングで号泣したり……。レコーディングで号泣するのはいつものことなんですけど、そもそもオリジナル曲のレコーディングがすごく苦手なんですよ。
カバーは原曲があるから、ある意味では正解があるんですけど、オリジナル曲は私がオリジナルになるから「自分らしさって何?」って考えだすと「どうしよう!」ってなっちゃうんですよね。とにかく「Step up Super Star!!」は泣きながら録ったのをすごく覚えてます。
──「Shout My Life」はどうですか?
MaiR:「Shout My Life」は、星乃めあからMaiRに名前が変わる時に、Q-MHzさんにご依頼させていただいた楽曲なんですよ。ふくぶちょーはQ-MHzの田淵智也さんがすごく好きで、音楽的にも結構影響を受けていたり、私の大好きなLiSAさんも田淵さんの楽曲をたくさん歌われているんです。MaiRとしてスタートするタイミングに最高の方々に制作をお願いしました。
直接お会いして打ち合わせして、LiSAさんの「Catch the Moment」のような曲にしたいと話しました。そこで今までどういう思いで活動してきたのか、それこそバーチャルの世界を知る前の自分のお話もしたりして、込めたい自分の気持ちもたくさん伝えて、その結果として完成した楽曲が「Shout My Life」なんですよね。
──「未完成アンチテーゼ」は、前2曲と比べるとかなり新しい楽曲ですね。
MaiR:メジャーファーストアルバム『未完星』に収録されている楽曲で、6ヶ月連続リリースしている曲の1つです。「未完成アンチテーゼ」は、アーティストのRockwellさんの作曲で私が作詞を担当した曲なんですね。
それまでふくぶちょー以外の方が作ったメロディーに歌詞をつけることがなくて、私にとっても新しい挑戦でした。逆にRockwellさんも、自分のメロディーに歌詞をつけてもらうのは、DECO*27さん以外だと初めてかもとおっしゃっていたんです。作詞にはすごく苦戦して、今まで自分の作詞では等身大のありのままの自分の言葉という詞が多かったんですけど、今回はちゃんと曲にテーマを持たせようということで、RPGの主人公に自分を重ねる歌詞にしようと思いました。
これがまたとても難しくて、Rockwellさんにめちゃくちゃ相談しながら、いろいろ教えてもらいながら作った楽曲だったので印象深い楽曲ですね。
アーティストの1人として、ロックフェスに出たい
──メジャーアーティストとして挑戦してみたいことや展望があったら教えてください。
MaiR:やっぱりまずアニソンシンガーになりたい!あとは、ロックフェスに出演したいです。大きなフェスに呼ばれるようなシンガーになりたいですね。
野外イベントにバーチャルアーティストが出演するには課題がたくさんあります。でも、私としては活動を始めたきっかけも、音楽をもっといろいろな人に届けるためにはどうしたらいいんだろうって思ってこの世界に踏み込みました。夢を追いかけているアーティストの1人として、ロックフェスに出たいなという気持ちがあります。
──最後に、3rdワンマンライブ「ASTRO ROCK」は、どういうライブを目指していますか?
MaiR:私がライブをする上で大切にしていることは、やっぱりその時その瞬間にしか生まれないものがライブだということです。
「すごいことをしてやろう。めちゃくちゃすごい練りに練った演出をしよう」というより、生の音と生の声、そして生のパフォーマンスで、会場にいるみんなと配信を見てくれているみんなで、その時にしか作れないものをつくるライブにしたいと思ってます。楽しいライブにしたいです!
【インタビュー後編公開🎙️】
— NEVER SLEEP (@neversleep_jp) May 27, 2023
「これから先もずっと、みんなの応援が私の力になる」
MaiRメジャーデビュー記念インタビュー・後編https://t.co/ZzQkZRNYex
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2023年5月27日(土)12:00〜6月3日(土)23:59
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— NEVER SLEEP (@neversleep_jp) May 27, 2023
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たくさんのご応募お待ちしております🙇♀️✨ pic.twitter.com/2k1rXPmQMS
----------「MaiR」プロフィール----------
『宇宙イチのキミだけのスーパースターになる!』を目標に2018年7月よりバーチャルロックシンガーとして活動を始めた。
キュートなルックスや"アホの子"な言動からは想像できない力強いロックな歌唱スタイルが特徴で、その歌声とパフォーマンスはオーディエンスのハートを自然と前へ向かせる。
インディーズでリリースした2nd ALBUM「paint the STAR」はiTunesロックランキングで1位に輝いた。
自身のYouTubeチャンネルは登録者数150,000人を超え、投稿したカバー楽曲は200曲に迫る。
活動5年目を迎えた現在も衰えない勢いを見せつけ、リアルとバーチャルを歌で繋ぎ紡ぐライブアーティストとして高い注目を集めている。
なお、IQは2万個である。
■公式サイト
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■Twitter
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ネバースリープ編集部 / NEVER SLEEP